
ChatGPTの「カスタムGPT」とClaudeの「プロジェクト」は、いずれも“自分専用のAIアシスタント”を作成できる機能です。しかし実際に使ってみると、両者には明確な違いがあり、設計や指示の出し方を大きく変える必要があることに気づきます。
本記事では、私が「参謀くん」というAIアシスタントをChatGPTからClaudeに移植した実体験をもとに、それぞれの特徴や使い分けのポイントを解説します。
AIツールの選定に迷っている方や、もっと効率的な使い方を模索している方にとって、実践的なヒントとなる内容になれば幸いです。
※本記事の情報は2025年5月現在のものです
1. 知識の教え方がまったく異なる
ChatGPTの場合:ファイルを小分けにして、必要なときだけ参照させる
ChatGPTに知識を与える場合は、「情報を小さく分割し、必要なタイミングで明示的に参照させる」方法が効果的です。
たとえば、Googleタグマネージャー(GTM)に関する知識を教える場合、以下のように資料を細かく分けて管理していました:
1. 基本概念の資料(5MB)→ 常に参照
2. 設定手順の資料(8MB)→「設定方法」を尋ねられたときにのみ参照
3. トラブル対応集(2MB)→ エラーに関する質問時に参照
4. 事例集(7MB)→ 具体的な活用例を求められた場合に参照
さらに、ChatGPTが参照すべきタイミングや優先度を指示する補助ファイルも活用していました:
# ファイル参照ルール
- 【常時参照】:基本概念の資料
- 【条件付き参照】:設定手順の資料
→「設定」「手順」などの語が含まれるときのみ
- 【条件付き参照】:トラブル対応集
→「エラー」「問題」などの語が出た場合のみ
これは、ChatGPTが一度に処理できる情報量に限界があるためで、「この質問にはこのファイルを使って答えて」と、明確に指示する必要があったのです。
Claudeの場合:統合ファイルを渡し、必要な情報を自動で抽出させる
一方、Claudeでは、アップロードされたドキュメントを自動的に文脈から検索・参照します。ChatGPTのように明示的にファイルを指定する必要は基本的にありません。
同じGTMに関する知識をClaudeに教える際は、以下のように統合されたファイルを使用しました:
1. GTM完全ガイド(約45MB)
- 基本概念
- 設定手順
- トラブル対応
- 活用事例
→ すべてを1つのドキュメントに統合
2. 実務テンプレート集(15MB)
3. 業種別応用事例集(20MB)
Claudeは、大きなファイルでも文脈をもとに適切な情報を抽出する能力に優れており、「この質問にはどのファイルを読んで答えるか」を逐一指示する必要がありません。
移植して分かったこと(まとめ)
- ChatGPT: 小分け管理+参照指示が前提 → 「今これを読んで答えて」と細かく制御する必要がある
- Claude: 統合ファイル+自動抽出 → まとめて渡して、AI側に任せた方が精度が高くなることが多い
このように、知識の教え方(ファイル構成・参照設計)が真逆であることが、実際の移行プロセスで明確になりました。
2. 指示の書き方もまったく違う
ChatGPTの場合:「性格」と「やること」を分けて明示する
ChatGPTにプロンプトを与える際は、AIの振る舞い(性格)と、実行してほしいタスク(機能)を明確に分けて記述すると、より安定した応答が得られます。
例:ChatGPT向けの分離プロンプト
# あなたの性格
- Webマーケティングの専門家として振る舞ってください
- 常に論理的な思考を心がけ、感情表現は控えめにしてください
- 専門用語は、括弧付きで簡潔に説明してください
# 回答の形式
1. 要点をまず箇条書きで提示してください
2. 次に詳細な解説を段落で記述してください
3. 最後に、次に取るべきアクションを提案してください
この分け方は、ChatGPTの内部構造――たとえば、Instructions(基本指示)
と System Prompt(事前指示文)
を前提とした設計にマッチしています。
役割定義と出力形式を分けることで、再現性のある応答が得やすくなるのです。
Claudeの場合:自然な文脈で一体的に指示する方が向いている
Claudeでは、性格や出力形式をひとつの自然な文として統合して伝える方が効果的です。人間同士の会話のように、背景や意図を含んだ形でまとめて指示できます。
例:Claude向けの統合プロンプト
あなたは「参謀くん」というWebマーケティングの専門家です。
論理的な思考を重視し、感情表現は抑えめにしてください。
専門用語は文脈に応じて、自然な形で説明を添えてください。
回答は、以下の順序で構成してください:
- まず重要なポイントを要約
- 次に詳細な解説
- 最後に次のアクションを提案
Claudeは、このように複数の要素が統合された文章でも、きちんと理解し、意図通りの出力を行ってくれます。むしろChatGPTのように分けすぎると、返答の文体や構成がやや不安定になることもあるため注意が必要です。
移植して分かったこと(まとめ)
- ChatGPT: 「振る舞い」+「出力形式」を明確に分離して記述 → 安定性が向上
- Claude: 一文にまとめて、自然な流れで指示した方が反応が良い → 対話的・柔軟な構造に強み
このように、同じプロンプト設計でも“分けるべきか・まとめるべきか”の判断が真逆になるのは、両者の設計思想の違いを如実に表しています。
了解しました。
では、**第3章「会話の記憶力も大きく違う」**のリライト版を以下に提示いたします。
3. 実際の移植体験:参謀くんの場合
Claude移行にあたって変更したこと
私たちは、ChatGPTで運用していたカスタムアシスタント「参謀くん」をClaudeへ移行するにあたり、いくつかの設計変更を行いました。以下はその主なポイントです。
1. 知識ファイルの再構成
- 複数に分割されていた資料を、関連するカテゴリ単位で統合
- 「この資料を読んで」といった明示的な参照指示を廃止
- Claudeが文脈から自動で情報を引き出せるように、全体の構成を意味単位で整理
2. プロンプト設計の簡素化
- 「もし〜なら」「〜のときは〜」といった複雑な条件分岐を排除
- 役割と出力形式を分けていた構造を、自然文による統合指示に変更
- 対話として違和感のない語順・構文を優先
3. 対話の流れの最適化
- 毎回の「前提確認」や「再説明」ステップを省略
- エラー対処に関する細かな例外指示を削除し、柔軟性をClaudeに委ねる
- 出力の形式整合よりも、自然なやり取りと一貫性を重視
同じ機能でも設計アプローチが異なる
たとえば「ブログ記事を作成する」タスクを例にすると、ChatGPTとClaudeではアプローチに以下のような違いがありました。
ChatGPTでの流れ(段階分割型)
1. テーマを確認
2. 構成案を提案し、ユーザーの承認を得る
3. 各セクションを個別に生成
4. 最後に全体を統合・調整
このように、段階を分けて制御する構成が安定運用につながっていました。
Claudeでの流れ(全体把握型)
1. テーマの意図を自動で把握
2. 構成含めて記事全体を一括生成
3. 必要に応じて部分的な修正を実施
Claudeでは、構成の理解から出力までを一気に行う設計の方が自然で効率的でした。
パフォーマンス面の違いと注意点
両者の違いは、処理性能や運用負荷にも現れます。ただし、コスト計算においては“トークンの単位”に違いがある点に注意が必要です。
比較項目 | ChatGPT | Claude |
---|---|---|
トークン単位 | 1トークン ≒ 英語4文字、日本語は約1.3〜2文字 | 1トークン ≒ 英語3〜4文字、日本語は約1〜1.5文字 |
処理速度(実測) | Claudeの方が高速 | – |
出力精度 | ChatGPTの方が安定する場面あり | – |
運用の手間 | Claudeの方が軽減 | – |
つまり、Claudeは一括処理と文脈維持に優れる一方、ChatGPTは分割設計による精密制御が得意という違いがあり、使い分けが重要になります(※上表はあくまで感覚によるものであり、定量的に計測したものではありません)。
4. どう使い分ける?実践ガイド
タスク特性による向き・不向き
ChatGPTとClaudeは、どちらも高性能な生成AIですが、得意とする業務タイプが異なります。以下は、用途ごとの適性を整理したものです。
ChatGPTが得意な場面
- 定型業務の自動化
- フォーマットに沿ったレポート作成
- 顧客対応のテンプレ返信
- コード生成や関数の書き換え
- 精密な制御が必要な業務
- API設計・データ構造の検討
- 複雑な演算処理や検証
- ミスが許されない文書作成(契約文書など)
Claudeが得意な場面
- 創造的・概念的な業務
- アイデア出し、ブレスト支援
- 長文の要約や多視点での分析
- 企画書・戦略文書のドラフト生成
- 柔軟性と自然さが求められる場面
- コンサルティング的な問答
- 会話ベースの設計レビュー
- 思考整理や仮説立案の支援
両者を組み合わせて使うワークフロー
単独で使うよりも、それぞれの特性を活かして併用する方が効果的です。
以下は、実際の業務フローで両者を使い分けた例です。
プロジェクト進行の使い分け例
フェーズ | 推奨ツール | 活用内容 |
---|---|---|
企画立案 | Claude | 発想支援・仮説設計・構成草案の作成 |
詳細設計 | ChatGPT | 実装ロジック・構成テンプレ・技術指示の整形 |
検証・調整 | Claude | 出力レビュー・説明文の再設計・対話でのブラッシュアップ |
ドキュメント作成 | ChatGPT | 設計書・マニュアル・手順化の精密生成 |
GTM設定プロジェクトの実例
第1週:Claude → 要件整理と設定構成の下書き
第2週:ChatGPT → 実装ステップとタグ記述の生成
第3週:Claude → 設定意図や注意点のまとめ、チェックリスト化
第4週:ChatGPT → クライアント向けマニュアルの整形と納品用文書作成
コストと運用負荷の比較(2024年実績)
比較項目 | ChatGPT Plus | Claude Pro |
---|---|---|
月額料金 | 20ドル | 20ドル |
初期設計負荷 | 高い(プロンプト設計に時間) | 低い(自然文で動く) |
運用の手間 | メンテナンス頻度高め | 自然運用で安定しやすい |
長文処理効率 | やや劣る(トークン制限が厳しめ) | 優秀(1トークン=1文字相当) |
※注意:両者でトークンの計算方法が異なるため、同じ文字量でも消費コストが変わります。特に長文処理ではClaudeの方が有利な場面が多いです。
まとめ:AIの“性格”を理解して付き合う
ChatGPTとClaude、どちらが優れているか――その問いには絶対的な答えはありません。
重要なのは、それぞれのAIが持つ「性格」や「考え方の癖」を理解し、自分の業務や思考スタイルに合った形で使い分けることです。
ChatGPTは「几帳面で命令に忠実なアシスタント」
- 明確な指示を出すほど、高精度で安定した出力を返してくれる
- 複雑なルールや手順に強く、細かい設計意図も忠実に再現
- 一方で、曖昧な表現や抽象的な問いには弱い面もあり、出力ブレが出やすい
Claudeは「気の利く、行間を読むパートナー」
- 指示が少なくても、文脈や意図を推測して柔軟に応答
- 会話ベースのやり取りが自然で、発想・戦略・要約といった思考支援に向く
- 一方で、構造やルールを厳密に守らせたいときには不安定になることも
成功の鍵は「適性の見極めと役割分担」
完璧なツールは存在しません。
だからこそ、それぞれの得意・不得意を冷静に見極め、タスクに応じて最適な役割を与えることが、AI活用の成否を分けます。
プロンプトエンジニアへのアドバイス
今後、複数のAIを使いこなす機会が増える中で、以下の視点が重要になります。
共通して必要なスキル
- 論理的な指示文の組み立て
- ユーザー(あるいは自分自身)の意図把握
- 知識・情報の構造整理能力
プラットフォームごとの特化スキル
ChatGPT向け | Claude向け |
---|---|
指示分離・テンプレ設計 | 自然文での意図表現 |
段階的な工程分割 | 対話的な流れ設計 |
出力の再利用性重視 | 文脈からの抽象力活用 |
最後に:困ったときには本人(?)に聞こう!
生成AIツールは、単なる「効率化手段」だけではなく、思考や創造の“パートナー”として付き合うこともできる存在です。
「この生成AIは、どう接すると最も力を発揮するか?」という視点を持つことで、ツールの性能以上に価値あるアウトプットを引き出せるように感じます。
・・・とまあ、ここまで難しいことを、いろいろ書いてきましたが、最終的に困ったときには、
「ChatGPTのことはChatGPTに、ClaudeのことはClaudeに聞こう!」
というのが、一番の近道だと思います。
ただし、生半可な聞き方ではいけません。
一片の疑問点も残さないように、疑問点が出てくる度に、大量のセッションを使い潰すまで質問攻めにすることで、いろんな知識やテクニックを覚えることができました。
新しいことを知ることは、とても楽しいことです。
皆さまもハッピーな生成AIライフに恵まれますように!
今日も最後までお読みいただきありがとうございました!
参考リソース(最終版)
- ChatGPT公式ドキュメント(OpenAI)
カスタムGPT・API連携・制御指示の基礎が網羅された公式リファレンス。 - Claudeのプロジェクト機能に関する公式ドキュメント(Anthropic)
Claudeプロジェクトの作成方法について書かれた初心者向けの公式リファレンス。 - Claude公式ドキュメント(Anthropic)
プロンプト構造やファイル管理方式、各モデルの説明がまとめられています。 - プロンプトエンジニアリングガイド(Prompting Guide)
Claude・ChatGPTを問わず活用できる、構造的なプロンプト設計のベストプラクティス集。
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