
ChatGPTを使っていると、「急に話が噛み合わなくなった」「急に回答が止まった」「演算や分析ができなくなった」「画像が生成できなくなった」「思った通りに動かない」などのトラブルに遭遇することがあります。
このマニュアルは、実際にそうしたトラブルに何度も直面し、運用や工夫やChatGPT本人(?)へのヒアリングを通して解決してきた体験をもとに作成したものです。
特別な技術知識がなくても理解できるよう、できるだけ専門用語は使わずに(または用語説明をつけて)まとめたつもりです。
業務での活用中に「困ったな」と思ったときの、一歩目の対応ガイドとしてご活用ください。
※ なお、このマニュアルはGemini・Claudeにも活用可能です!
1. セッションが切れる・会話が通じないとき
1)よくある症状
- 急にChatGPTの返答が止まる
- それまでの話の流れを忘れたような返答をしてくる
- 「前にも言ったのに、また説明してる…」と感じる
- 急に語調やキャラが変わったとき
2)主な原因
- ChatGPTが保持していた会話の「履歴情報」が消失することがあります。
これは一定時間が経過した場合や、内部処理でエラーが起きた際によく発生します。 - なお、検索機能を使ったときにも語調やキャラが変わることがありますが、これは異常ではなく元々の仕様ですので、ご安心ください。
3)解決策
- 要約から再提示する
たとえば「これまでのやりとりをまとめると…」と自分で要点を整理し、再提示することで、会話の続きを再開できます。「話が噛み合わないな」と感じたときに、ぜひ試してみてください。 - 会話をいったん切り替える
上記の方法でも回復しなかった場合は「新しいチャット(=「セッション」と言います)」を開いて、元のセッションでの話の要点を説明し、「この話の続きですが」と再スタートすると、作業を継続することができます。 - 文脈リセット時のための引き継ぎ書を用意しておく
定期的に「今までの話を要約して」と指示して、議事録のようなものを用意しておくと、セッションに異常が出たときのセッション乗り換えがスムーズになります。
解決用プロンプト例:
これまでの会話が途切れたようなので、要点だけまとめますね。
●課題:〜〜
●目的:〜〜
●依頼内容:〜〜
これらを前提として、続きをお願いします。
※用語解説:
セッション…ChatGPTとの「1つの会話単位」。セッションが終了すると、文脈がリセットされる。
文脈…ChatGPTが理解するための“会話の流れ”。これを失うと「話が噛み合わない」現象が起きやすくなる。
2. 出力が途中で止まる・応答が切れるとき
1)よくある症状
- 文章が途中でぷつっと止まってしまう
- 返答が「以下のとおりです:」で終わり、続きが出てこない
- 長文の指示に対して、一部しか返ってこない
2)主な原因
- 文字数(トークン)制限による処理中断
- モデル内部のエラーや一時的な負荷状態
- 長文プロンプトがモデルにとって“理解しきれない”形になっている
3)解決策
- 「続けて」と促す
単純ですが効果的です。「続きお願いします」「続きをもう少し詳しく」と声をかけると再開されることがあります。 - 出力を意図的に分割する
事前に「まず前半を出して」「項目ごとに順番に」といった指示を入れて、ChatGPT側が混乱しないように設計しておきます。 - プロンプトを整理・短くする
一度の要求が複雑すぎると、ChatGPTは処理に失敗します。「要点だけ先に出して」「一文ずつ考えて」などの形に変えると安定します。
解決用プロンプト例:
先ほどの内容が途中で終わったようです。続きをお願いします。
または:
この文章は長いので、最初に「導入」部分だけ出してください。
その後で「本文」を出してもらえればOKです。
※用語解説:
トークン…ChatGPTが扱う文字数単位。日本語1文字=1トークン程度。上限を超えると処理が止まる。
プロンプト…ユーザーからChatGPTに与える指示文。長すぎたり複雑すぎると誤動作しやすい。
3. 画像生成ができない・壊れるとき
1)よくある症状
- 画像生成を頼んでも「生成できませんでした」と表示される
- 出てきた画像が壊れている、または見た目がおかしい
- 「今は対応していません」と言われる
2)主な原因
- 長時間使い続けたセッションの負荷・劣化
- セッション内での画像処理機能の不具合
- モデル側で画像生成機能が制限されている時間帯(まれにあるそうです)
3)解決策
1. セッションを切り替える
画像生成は特に処理が重く、不安定になりやすい機能です。
そのため「画像だけは別セッションで生成する」のが、実は一番安定します。
2. 画像用プロンプトを分離して設計する
- 主セッションで、画像生成用のプロンプトだけを作成(例:「こういう画像を作ってほしい」)
- そのプロンプトを新しいセッションにコピペして画像生成を指示する
これにより、余計な文脈が混ざらず、軽い状態で画像生成できます。
解決用プロンプト例:
この画像生成はうまくいかないようなので、プロンプトだけ出してください。
別セッションで実行します。
※用語解説:
画像生成…ChatGPTの機能の一部で、DALL·Eという生成ツールを呼び出すことで画像を生成する。
セッションの劣化…長時間使っていると会話データが蓄積し、動作が遅くなったり誤作動しやすくなる。
4. Pythonコードが動かない・反応しないとき
1)よくある症状(下記の機能はChatGPT内蔵のPythonでおこなっています)
- データの読み込みや分析、ファイルの出力などができなくなってしまう
- 何も出力されず、待っても応答がない
- 「実行中…」のまま止まってしまう
2)主な原因
- セッション内でPython実行環境が破損している状態
- 一度に重い処理を依頼してタイムアウトが発生(=PCでいうフリーズ状態)
- ChatGPTが、回答や演算をしている途中に強制停止して、すぐに別の指示を送った時
3)解決策
1. Python処理は別セッションで実行する
画像生成と同様、Python実行機能も専用セッションで安定動作しやすい傾向があります。
- 通常のアイデア出しやコード設計は主セッションで行い
- 実行だけは「新規セッション」で試すのがベストです
2. コードを簡素化・分割して試す
1回で複雑な処理を要求すると、モデルが内部的に処理しきれずエラーになります。
特にCSVの加工や再帰処理などは、ステップごとに試すようにしましょう。
3. ChatGPTの動作を強制停止したときは、すぐに指示しない
ChatGPTの動作を強制停止したつもりでも、内部ではPythonの演算処理が続いており、すぐに別の指示を出すと複数の処理が競合して演算を失敗することがあります。
強制停止をかけたときは5秒ほど時間をおいてから、次の指示を送るようにしてください。
解決用プロンプト例:
このコードを動かすと止まってしまうので、処理内容を3ステップに分けて再構成してください。
まず「読み込み」だけやってみます。
※用語解説:
Python実行…ChatGPTのCode Interpreter(Python)機能を使って、CSV処理や計算を実行する機能。
タイムアウト…処理が一定時間以上かかると、自動的にキャンセルされる仕組み。
5. CSVが読み込めない・うまく解釈されないとき
1)よくある症状
- 「CSVが正しく読み込めませんでした」と表示される
- 項目名がズレて、内容をうまく認識してくれない
- 「ファイル形式が違います」と言われる
2)主な原因
- **装飾行(空行・タイトル行・複数ヘッダ)**が混ざっている
- 日本語ファイル特有の文字化けなどで、CSVの形式崩れが発生している
- セルの区切りや改行が不規則で、ChatGPTが構造を認識できない(GA4のCSVデータでよく発生します)
3)解決策
1. 不要な部分を削除して渡す
CSVファイルをそのまま渡すのではなく、データ本体(中身)だけ抜き出して渡すのがベストです。
特にGoogleアナリティクス(GA4)のCSVには、
- 空行
- 複数行のタイトル
- セル結合された装飾行
など、“人間用の見た目装飾”が多く含まれており(下図参照)、そのまま読み込むと失敗します。

または、下記のプロンプトで、不要な部分を読み飛ばしてもらってください。
解決用プロンプト例:
このCSVのうち、1〜9行目は不要です。
10行目以降だけを使用して、分析してください。
実例ヒント:
「GA4のCSVは1行目から使えるとは限らない」ことが多いため、先に人間の目で“使える部分”以外を確認し、削除してから渡すのが一番確実です。
※用語解説:
CSVファイル…データをカンマ区切りで並べたテキストファイル。Excelなどからも出力可能。
装飾行…ツールが自動で挿入する見出し・注釈行のこと。ChatGPTはこれを誤認識しやすい。
6. 応答が曖昧・不安定なときの原因と対策
1)よくある症状
- 同じことを繰り返すような返答になる
- 回答が「それについてはわかりません」と曖昧
- 指示の通りに動いてくれない
- 口調が途中で変わる、文体がバラバラになる
2)主な原因
- 指示の中にあいまいな言葉が含まれている
- 主語が省略されているため、ChatGPTが文脈を誤解している
- セッションが長くなって文体や設定がぶれてきている
3)解決策
1. 主語や前提を明示する
たとえば「これを要約して」ではなく、「以下の提案書を300文字で要約してください」など、誰が何をするのかをはっきり伝えると改善されます。
2. トーンや口調は明示して指示する
ChatGPTは柔軟に文章スタイルを変えられますが、トーン指定をしないと毎回少しずつブレることがあります。
たとえば:「高校生でも理解できるように、わかりやすい文章で説明してください」
3. 一貫性が必要な場合は文体制御プロンプトを固定化する
プロジェクトで一定の語り口・立場が必要な場合、「あなたは○○という立場のコンサルタントです」と毎回冒頭に入れることで安定しやすくなります。
※用語解説:
あいまいなプロンプト…「これ」「あれ」など指示の対象が不明確な表現。文脈の保持が切れると失敗しやすい。
トーン・文体制御…ChatGPTに「丁寧に」「口語で」「論文風に」「ですます調で」など、話し方や文章調を指定する方法。
補足:セッションの引き継ぎ・キャラクター再現について
ChatGPTの使い方が進むと、「このセッションの続きがやりたい」「同じキャラクターで別の話題を扱いたい」と感じる場面が増えてきます。
しかし、セッション(会話単位)をまたぐと、設定やトーン、話の流れは基本的にリセットされてしまうため、再現には少し工夫が必要です。
1)キャラや文体を引き継ぎたい場合
セッションを切り替えても「同じ話し方・立場」で再現したいときは、設定文をそのまま再利用するのが有効です。
引き継ぎプロンプト例:
あなたは今後も「◯◯という立場のプロフェッショナル」として、次の内容を扱ってください。
話し方は、○○口調、説明は高校生でもわかるように丁寧にお願いします。
- 「参謀のような話し方」「教科書的な文体」なども再現可能
- 必要であれば過去のやりとりを「要約」で補うと文脈が通りやすい
2)セッション障害からの復旧策
- 画像生成やPythonなど機能が固まってしまったときは、復旧はほぼ不可能
- ただし「プロンプトだけ再設計して他セッションで実行」すれば、機能分離で回避可能
実用パターン:
- 通常の会話 → 主セッション
- 画像やPython → 専用セッションで処理
このように、セッションを切り替えても“やりたいことの軸”を明確にすれば、ChatGPTは継続的に活用できます。
おわりに:トラブルも“慣れ”で乗り越えられる
ChatGPTは非常に強力なツールですが、万能ではなく、扱い方にコツが必要な道具でもあります。
「何かうまくいかないな」と感じたときに、焦らず原因を切り分けて対処できるかどうかが、長く付き合うためのカギです。
このマニュアルで紹介したのは、実際の利用現場で頻出する代表的なトラブルばかりです。
とくに以下のような考え方を持っておくと、安定運用につながります:
- 「長時間同じセッションを使わない」
- 「出力が止まったら、焦らず促す」
- 「データは中身を確認して、不要な部分を削除してから渡す」
- 「用途別にセッションを分ける」
GPTのような生成AIは、賢いようで思った以上に “バカ正直” で “繊細” です。
うまく付き合えば、単なる時短ツールではなく、思考のパートナーとして頼れる存在になってくれるはずです。
ぜひ、このマニュアルを“ブックマーク”しておいて、ChatGPTでトラブルが起きたときにご活用ください。
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