AIに「代用」されない”自律型人材”とは?――AI時代に求められる「問う力」

最近Webなどで「AIに取って代わられないために」といったテーマのコラムや記事を見かけることが増えてきました。
これまでの技術進歩との大きな違いは “頭脳労働を代替できる技術” だということですね。

事務作業、資料作成、調査、分析……これまで「人間にしかできない」と思われていた仕事が、次々とAIに置き換わりつつあります。
これは私にとっても、決して他人事ではありません。

というわけで、私が普段から提案支援に使っている AI(ClaudeCodeの「参謀くん」)とディスカッションしながら、この記事を書きました。

「結局お前もAI頼りかい!」というツッコミはご容赦ください笑

1. 「指示待ち型」ではもう遅い

「クライアントのリクエストが来たら動く」「上流行程の要件が固まってから設計する」

――かつてはそれで十分でした。

しかし、今の仕事環境では状況が毎週変わります。市場も技術も、昨日の前提が今日には通用しない。
そこで注目されているのが、“Self-Starter(自律的に動ける人)” という考え方です。

これは単に「行動力がある」という話ではありません。
「自分で課題を見つけ、仮説を立て、仲間を巻き込みながら進める人」

――そういう人が組織に求められていく時代になってきているようです。

2. AIが「考えてくれる」時代になっても、考える力は不要にならない

ChatGPTやCopilotなどのAIツールは、すでに多くの事務作業や頭脳労働を支えています。
資料作成、調査、コード補助、コピーライティング……。

「これさえあれば人間の仕事はいらない」と言う人もいるかもしれません。
ですが、実際は、その逆です。

AIの進化によって、作るスピードは大幅に上がり、品質も向上していますが、
AIに “問いを出し”、アウトプットを “評価・選定し”、アウトプットに “責任を持つ” ことは、人間にしかできません。

AIは「指示通りのものを最短で」アウトプットすることはできても「今、何が必要か?」「どこへ向かうべきか?」という “方向性の判断” はできないのです。

3. AIで “自律的に動ける人” になるためのポイント

自律型人材をAIと組み合わせるとき、次のような役割分担で考えるとわかりやすいです。

ステップ人間の役割AIの役割
課題を見つける現場で感じる違和感や顧客の不満を観察し、問題を言語化する過去のデータや傾向を解析し、関連パターンを提案する
仮説を立てる「こうすれば良くなるのでは?」という仮説を立てるそれに近い成功事例・失敗事例を調査・提示する
設計する目的や制約条件を整理し、解決プロセスを描く図面・構成・スクリプトなどの具体案を生成する
検証する実際に試し、感覚的なズレを評価するログや数値で分析・評価する
改善する成果と失敗を振り返り、次の仮説を再構築人間からのフィードバックやデータを分析して、改善パターンを提案する

AIを「自分の分身」ではなく「支援装置」として使うと、このサイクルが回りやすくなります。
つまりAIが作るスピードを上げ、空いた時間で人間が考える深さを深めていく形です。

4. 「AIが勝手に動いてくれればいい」という幻想

AIが自律的に動くように見える瞬間があります。
たとえば、チャットボットが顧客対応を自動でこなしたり、分析AIが異常を検知して警告を出したりする。

しかし、それは「自己判断」ではなく、設定された指示に従って動いているだけです。
AIは意志を持たず、環境の変化を”感じる”ことができないので、臨機応変な対応ができません。

だからこそ、人間が “設定=問いを考え”“アウトプットを評価し”“運用=設定を改善し続ける” 必要があるのです。

5. 「AIを使える人」と「AIに使われる人」の境界線

AI時代のキャリアで最も重要なのは、ツールを使いこなすスキルよりも、“問いを立てる力” だと言えそうです。

AIに質問するだけで、ある程度の答えは出ます。
でも “正しい問い” を立てられなければ、AIの答えは的外れになります。

たとえば:

  • ❌「売上を上げるには?」 → 汎用的で役に立たない。
  • ✅「30代女性のリピート率を上げるために、AIが提案できる改善策は?」 → 具体的で使える。

AIは「人の問いの質」でアウトプットの質が大きく変わります。
つまり、AIを使いこなせる人は、“質問をデザインできる人” なのではないかと思います。

6. AI時代の “自律” は「孤独な努力」ではなく「意識的な協働」

よくある誤解として「自律的に動く=一人で完結する」と考える人がいます。
しかし実際はその逆です。

AIを活かす人ほど、人との連携も上手い
なぜなら、AIが出した答えを共有し、いろんな人を巻き込んで議論を重ね、改善を進めていくプロセスがあって初めて「AIを活用できた」と言えるからです。

なお、ソロワークで、気楽に相談できる相手がいない場合は、複数のAIとディスカッション(=いわゆる壁打ち)を重ねるという方法もあります。

また、別のAIの提案をそれぞれに評価させあって、互いにフィードバックを返させる往復書簡のようなことをやることもあります。
友人からは「変態っぽいw」などと言われますが…笑

自律とは「一人で全部やる」ことではなく「自分の頭で考えた上で、他者やAIと協働する」こと。
それがAI時代の”新しいチームワーク”の形ではないかと思います。

7. まとめ:AIは有能だが、的確な指示がなければ何も出来ない

AIは、膨大な情報を観測し、整理し、提案できます。
しかし、的確な指示を与えなければ、AIは全く使い物になりません。

「それをどう使うか」「どんなゴールを目指すのか」を決定し、AIに指示を与えるのは、あくまでも人間なのです。

最後に

AIは仕事の「やり方」を変えました。
しかし「クライアントが我々に求める価値」は変わりません。

「AIに代用されない」「AIに使われない」人とは、AIを知り、AIに依存せず、AIや人と対話しながら自分の意思で、プロジェクトを前に進められる人のことではないかと思います。

参考リンク

  1. 自律型人材とは ~育成失敗を回避するポイントと成功の秘訣~|グロービス
  2. Designing AI That Keeps Human Decision-Makers in Mind | Stanford Graduate School of Business
  3. Three Challenges for AI-Assisted Decision-Making | Psychological Science in the Public Interest
  4. Artificial Intelligence + Decision-making | MIT EECS